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日本国際交流センター 特別レポート

東日本大震災への米国からの寄付が7億1000万ドルを超える

先進国への民間支援として記録的な金額

*本稿は、米国法人日本国際交流センター執筆のレポート「US Giving for Japan Disaster Exceeds $710 Million」(2013年3月)の和文版である。

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2013年3月8日

日本国際交流センター(JCIE)の調査によると、日本が破壊的な地震と津波に襲われてからの2年の間に、米国市民が復興支援のために寄付した総額は7億1260万ドル(約641億円)にのぼる。この数字は、他の先進国で発生した自然災害に対する米国からの民間支援として過去最高額であり、米国民による災害に対する寄付の歴史上においても5番目の金額である。


2年前の3月11日に東北沿岸部で発生したマグニチュード9の地震は、131フィート(約39.9メートル)の大津波を引き起こし、400マイル(約646キロメートル)にわたって沿岸部を破壊、福島第一原子力発電所でのメルトダウン事故の引き金となった。1万8000人以上が犠牲となり、50万人近い人々が自宅から避難することを余儀なくされた。現在でも30万人以上が帰宅できずにいる。この「三重災害」ともいえる災害の衝撃的な報道映像と被災者の痛ましい体験は、世界中の人々の心を突き動かし、全世界が日本国民の気持ちに寄り添い深い同情の念を表した。その人々の思いは惜しみなく寄せられた寄付金額にも表れており、特に多くの寄付を行ったのが米国民で、その金額は隣国の台湾や韓国からの多額の支援をもはるかに上回る大きなものとなった。


草の根的現象

東日本大震災直後の数ヶ月間、米国の新聞には「米国の寄付、日本に流れ込まず」や「米国民、日本の災害に非同情的か」といった見出しが目立った。しかしながら、今回JCIEの調査で判明した数字が示しているのは、こうした過小評価の原因となった理由は、同時に、 米国民の寄付活動における異例の深さと強さを示すものだということである。従来の自然災害支援では、限られた数の著名なチャリティ団体に寄付が寄せられていたため、メディアや調査機関等が寄付総額を把握しやすかったが、今回は何万人もの米国民が自分達で小規模な募金活動を行い、寄付金を有効活用できる支援方法を検討するのに相当な期間を費やした。また、日本とコネクションがあるが災害支援のためのファンドレイジングの経験はない数百に及ぶ団体が、直接日本に寄付金を届けるべく独自に募金活動を行ったが、こうした活動は、いわゆる災害支援フィランソロピーのモニタリング範疇からもれていた。同様に、数千単位の教会、学校、地域団体が募金活動を行ったが、これらの膨大な寄付の数字はなかなか明確に見えてこなかった。


こうした幅広い反応は、過去数十年にわたって蓄積されてきた日米間の草の根レベルの絆をあらわしている。インド洋津波やハイチ地震に対する寄付は、被災者が貧困層であることに突き動かされてのものだったが、裕福といえる日本の被災者に対しての寄付は、より個人的な絆に突き動かされた結果のようである。多くの募金活動の中心となったのは、JETプログラム(語学指導を行なう外国青年招致事業)などを通じて日本で働いたり学んだりしたことのある人々や、アニメやスポーツ、文化を通じて日本に親しみを持つ人々であった。この人と人との絆の強さを示す顕著な数字として、日米関係の多様な側面で活動する65団体が約5000万ドル(約45億円)の寄付を復興支援に寄せたことが挙げられる。これには、全米各地にある40の日米協会(Japan-America Society)や日米間の知的交流、文化交流、経済交流に携わる数十の団体が含まれる。さらに、日本の自治体と姉妹都市提携をしている100近い米国の市や町でも募金活動が行なわれ、240万ドル以上(約2億1600万円)の寄付が集まったことも、草の根レベルの絆の強さを示している。


幅広い反響

米国による東日本大震災への支援で特筆すべき特徴は、極めて幅広い多様な市民団体が募金活動を行った点である。数千の団体が募金活動を行い、このうち330団体が、複数の団体が集めた寄付金を取りまとめて現地で活動する日本の団体へ橋渡しする重要な役割を果たした。また47団体が各100万ドル(約9,000万円)以上の募金を集め、そのうち5団体は各500万ドル(約4億5000万円)以上を集めたというのも驚くべき数字である。


米国赤十字やセーブ・ザ・チルドレンといった、従来から多くの災害支援募金を集めている人道支援団体の大手が、今回の総寄付金額の大半である68%、上位10団体中7団体を占めていることは想像に難くない。しかし、米国のフィランソロピーの特徴のひとつは、寄付金の17%が、日本とはさほどつながりのないサマリタンズ・パース、カトリック救済サービス、LDSチャリティーズ(末日聖徒慈善事業団体)といった、信仰に基づいた社会奉仕活動団体によって集められたことである。また、国外の諸課題に対する募金活動を行う新しいタイプのフィランソロピー中間組織であるグローバル・ギビングやギブ2アジア等が、これまでの海外における被災支援の際よりも際立った役割を果たしたことも特筆すべきだろう。


米国の寄付の背景とインパクト

震災直後、日本事情に詳しくない米国のコメンテーターの一部からは、日本は裕福な国なので、寄付は不要であるとのコメントもあった。しかし、この見方は、日本は裕福な国でありながら非営利セクターの資金が決して潤沢ではなく、むしろ予算不足であるという現実を見落としている。日本の非営利組織の予算基盤が脆弱であること、またそれにも関わらず彼らの活動は行政の手が行き届かない部分で非常に重要な役割を果たしていることから、今回の米国からの寄付は、極めて大きな効果をもたらすこととなった。


アジア系アメリカ人による寄付の高まり

東日本大震災後の日本への支援において、アジア系アメリカ人の果たした役割は注目に値する。日系アメリカ人や他のアジア系アメリカ人は、ファンドレイジングを行った人道支援団体やフィランソロピー組織で重要な役割を果たした。加えて、多くのアジア系アメリカ人の団体が独自の募金活動を立ち上げた。

当然のことながら、日系アメリカ人による活動は特に目立った。ニューヨーク日系人会(the Japanese American Association of New York)、日系アメリカ人市民同盟(the Japanese American Citizens League)、カリフォルニア日本文化コミュニティーセンター(Japanese Cultural and Community Center of Northern California)、米日カウンシル(US-Japan Council)の4団体は、それぞれ100万ドル(約9000万円)以上を集め、全米の日系アメリカ人コミュニティ全体での寄付総額は少なくとも1400万ドル(約12億6000万円)となった。

また他のアジア系アメリカ人団体も日本の被災者を思い、活動を展開した。少なくとも40の中国系アメリカ人と韓国系アメリカ人の団体が募金活動を行った他、東南アジアなどとつながりのある人々も日本の被災者援助の募金活動を立ち上げた。

日本における寄付活動をまとめた『寄付白書2012』によると、2012年9月末時点で日本国内で集められた東日本大震災関連の寄付金額は約6千億円にのぼったが、その85%は政府や自治体の機関への寄付、または、直接被災者に支援金が渡る義捐金で、NPO活動に対する寄付は日本ではまだ少ない。


これと対照的に、米国では集まった寄付金の約90%にあたる6億4000万ドル(約576億円)がNPOへの支援に充てられている。寄付白書では、非営利組織に対する国内の寄付額については網羅できていない点もあるとのことであるが、寄付白書や、今回JCIEが行なった調査、またその他の調査結果から算出すると、日本の非営利組織に集まった寄付金総額の1/4から1/3ほどが米国からの寄付であると考えられる。


米国からの寄付も緊急支援だけではなく、 多くが長期的な復興支援活動に充てられたため、東北での復興活動を持続的に継続するための一助となっている。たとえば、米国からの寄付全体の17%が地域の絆を再建する活動に、12%が社会心理学的なカウンセリング活動に、11%が非営利団体の能力強化活動やボランティア動員の活動に充てられた。


今回の震災で被災地の非営利組織は、政府機関が対応しきれない幅広い活動に従事し、日本の災害対策史上、これまでにない重要な役割を果たしている。こうした活動のための資金の少なからぬ割合が米国からの寄付によって支えられていることを考えると、日米間の草の根の絆と米国市民による惜しみない寄付が東北地方の復興活動に大きな役割を果たしたことは自明である。



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調査の方法について


今回の調査結果は2012年3月と9月に公表した調査の最新版である。日本国際交流センターでは日米の約1100組織から情報を集めた。調査対象の内訳は米国の579の非営利団体、455の企業、7つの在米日本総領事館、52の日本の主要非営利団体で、これらの組織に対して電話、メール、オンラインリサーチを行い、東日本大震災への米国からの民間支援の全体像の把握に努めた。


推計には企業による寄付、財団による寄付、在米の組織を通じた個人寄付が含まれる。また日本への寄付として支出及びコミットされた資金を含むが、米国政府機関による支出は含まれない。米国内の寄付は複数の団体を通して被災地で活動する組織に届けられるため、極力、二重計上されることのないように努めた。


日本国内の寄付については、被災者個人に支給される義捐金が最も多く、日本赤十字社と共同募金会が義捐金を募集した。義捐金として集められた寄付は、非営利組織への助成には使われておらず、本調査の計上の対象にしていない。一方、日本赤十字社では、海外からの寄付は義捐金でなく日赤自身による長期復興基金として受け入れており、また中央共同募金会も同様にNPO活動への助成を行っており、両者は本調査に計上されている。為替は1ドル90円として計算している。